2006年11月18日

福沢諭吉の慶応義塾大学と教育基本法

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義務教育とはCompulsory Educationの訳で、はじめは強迫教育とも訳されていた。
強迫なんだぜ、だから学校がツマラナイのは当たり前なんだ。

福沢諭吉が慶應義塾大学をつくった理由を知れば、この国の教育の歴史と、改正を急ぐ安倍の浅はかな魂胆が見えてくる。

以下、小熊英二『日本という国』(理論社)によれば、1872年(明治5年2月)初編出版、福沢諭吉の有名な『学問のすすめ』。この中で彼は「賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりて出来るものなり」とした。時を同じくして明治5年、この年から義務教育がはじまっている。

徳川支配の封建時代では、武士の子は武士、農民の子は農民、商人の子は商人と親がどういう身分かで子供の未来は決まっていた。
これからは、身分ではなくて、学問で自由競争する時代となったんだと福沢は問いたわけだ。

誰でも、立派に勉強すれば「偉い人になれる」と、「サルでもわかるように」福沢は訴え、『学問のすすめ』は初出版以来合計約70万冊のベストセラーとなった。

しかし、福沢の目的は別にあった。

戦争になったら、無知無力の小民たちは……われわれはお国のことなんか何も知らない客分だ、だから命を棄てて国に尽くすなんか過分のことだといって、逃げ去ってしまう者がおおいだろう。(中略)これでは、とても一国の独立はむずかしい。


簡単に言えば、「国を愛し」、「国のために命を棄てて戦う」国民が必要だというのだ。

しかし、教育を施せば問題も出てくる。
…最も恐るべきは貧にして智ある者なり。…世の中の総ての仕組みを以って不公不平なものとなし、しきりに之に向て攻撃を試み、或は財産私有の法廃すべしと云い、或は田地田畑を以て共有公地となすべしと云い、其の他被傭賃の値上げ、労働時間の減縮等、悉く皆彼等の工夫に出でざるはなし。…智恵あるが故に苦痛の苦痛たるを知りて自ら満足するを得ず、其の不平の鬱積、遂に破裂して社会党となりたるものなり。貧人に教育を与うるの利害、思はざる可らざるなり。


教育によって貧乏人が目覚めて、社会主義や労働運動を起こすことを恐れたのだ。

欧米は、国内の不平不満の鬱憤のはけ口として、アジア・中国を植民地として侵略をしていた。この流れは変えられない、日本という国のためには、日本も欧米化しなければならない。戦争だというわけだ。

…(中国・朝鮮)これらは、いまから数年たたないうちに国として亡び、その国土は世界文明諸国に分割されてしまうことは一点の疑いもない。(中略)
わが国は、隣国の開明を持ってともにアジアをもりたててゆく猶予はない。むしろアジアの隊列から脱して、西洋の文明国と進退をともにし、中国や朝鮮に接するやり方も隣国だからといって特別の遠慮をせず、まさに西洋人がこれらの国々に接するやり方にしたがって処分すべきだけだ。(脱亜論)

これは、ネット右翼の落書きではない。福沢の文章だ。

「美しい国日本」の近代化はこうして始まった。

福沢が慶應義塾大学を創立した理由は、アジアを侵略して日本を富ませるためだったのだ

しかも、福沢は1882(明治15)年の「遺伝能力」にて、アイヌ人は遺伝的に能力が劣るから、どんなに教育しても慶応義塾の教員にはなれないと書いている。

さてさて、福沢が『学問のすすめ』を書いて、貧乏人でも偉くなれるとといたが、いっこうに国民は教育に無関心であった。就学率は30〜40%に低迷していた。なんせ、義務教育はタダでなかったからだ。教育費支払い拒否のために学校を焼き討ちしたりしている。三重県では1876(明治9)年に40もの学校が焼き討ちにあっている。

義務教育が無料になったのは、日清戦争で勝ってから。このときの賠償金で教育基金がつくられ、1900(明治33)年にタダとなったのだ。
戦争に役に立つ兵隊は、読み書き算数ができなければならないからだ。
そして、産業の発達によって会社や工場が増え、貧しい農民も勉強すれば良い給料の職場で働けるようになったことが、就学率を増やした。
1902(明治35)年には、小学校の就学率が約92%がにも上がっている。

その間、政府は「智恵ある貧しきもの」が叛乱を起こすのを恐れ、「国のために命を棄てる国民」を作るために「教育勅語」や「皇国史観」を徹底的に義務教育で叩き込んでいった。

世界恐慌の打開策として、日本が中国への侵略を始めたのは、近代国家としての日本の歴史、その流れから考えれば「智恵ある貧しきもの」が叛乱を起こすのを恐れた政府が行った、澱んだ川の流れのようなものであった。

その流れに、安倍が推進する教育基本法の改悪があることを我々は知っておかなければならない。

その内容は、「貧して智恵ある者」の叛乱を防ぎ、米軍のために血を流す国民を作るためとしか思えない内容だ。

上野千鶴子が佐高信との対談で週刊金曜日11/3で言っていた。
私、政治が教育に手をつけるのは、最後の手段だと思います。なぜかと言うと、今いる大人に期待しても無駄だよと言っているのと同じだからです。
最近『朝日新聞』に世界価値観調査のデータが出ていました。「もし戦争が起こったら国のために戦うか」という問いに「はい」と答えた日本人は約15%で36ヶ国中最低でした。これは日本の戦後教育のすばらしい成果だと思います。でも、その同じ結果にほぞをかむ思いをしている保守勢力がいて、いまの大人たちをたたきなおすことはもうできない。次の世代を、というのが教育改革なんです。教育基本法の改正問題でもボランティアの必修とか強制とか言っているでしょ。本音では兵役を必修させたいところを。平和的なボランティアに置き換えているだけでしょう。

鋭い指摘だね。

戦後教育のおかげで、国のために戦争しない人間が増えたのは大いに結構。ちなみに世界価値観調査で国のために戦うと答えた1位はベトナム。2位は中国でしたよ。日本は最下位36位で、35位のドイツの半分しかない結果だ。
http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/5223.html
中国のような「国のために戦う人間」ばかりの国にならないように、教育基本法は守らなきゃ。野党諸君の検討を祈る。

【蛇足】
「核武装だ」「中国は脅威だ」「北朝鮮を攻めろ」口だけ威勢の良い「自称保守」の諸君、お前らのどれぐらいが予備自衛官補に登録しているか知りたいところだね。

18歳から34歳の愛国者諸君、中国の人民を見習って、いまからでも遅くない、「美しい国に命を捧げるため」にぜひ登録してちょ↓
http://www.jgsdf.go.jp/reserve/index.html

posted by 死ぬのはやつらだ at 16:43| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 大日本帝国と戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
面白い指摘ありがとうございます
教育基本法「改悪」阻止にむけた
搦め手からの攻撃、ご苦労さまです。
今後も期待しております。
Posted by GO at 2006年11月18日 23:19
福沢諭吉については、両論あって、今も論争が続いているようですよ。Amazon.comの読者書評欄によると、「日本の文明開化を先導した偉大な思想家福沢諭吉は、アジアを蔑視し中国大陸への侵略を肯定する文章をたくさん残している。それを理由に福沢を全否定しようとする動きも絶えない。確かに現在も刊行されている福沢の全集にはその種の文章が多数収録されている。しかし、それを書いたのは本当に福沢本人なのか?」という『福沢諭吉の真実』の著者平山氏と、平山氏の著書は「福沢の思想への内在的考察を怠った、形をかえた新たな福沢諭吉美化論にすぎない」という『福沢諭吉の戦争論と天皇制論』の著者安川氏が激突状態らしいです:

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166603949
Posted by ノリノリ at 2006年11月27日 23:45
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