2008年10月01日

たぶん永遠に封印されるだろう映画「天皇伝説」と「ノモンハン」の映画批評

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映画秘宝の最新号に載った記事。
観たぞ!『天皇伝説』

ライターの柳下穀一郎が8/27、渡辺監督の本拠地福島文化センターで上映された内容をレポートしている。
たぶん、今現在唯一の映画『天皇伝説』批評のはずだ。



『ノモンハン』は1939年に満蒙国境で起こったソ連と日本軍の軍事衝突
"ノモンハン事件"をテーマにしている。日本軍の惨憺たる敗北に終わったノモンハン事件だが、国内では敗北の事実は隠され、生き残った連隊長らは責任を取らされて自殺を強要された。だが、その戦争で生き残った渡辺文弥大佐(渡辺文樹)はただひとり自殺を拒み、日本に帰ってきた。満蒙国境の事実を伝えるために……だが、彼を迎えるはずの陸大出のエリート息子、文二郎の顔はなかった。息子は自殺していたのである。渡辺大尉は息子の自殺の真相を知るため、美しい嫁ノブに迫る。息子の死は満蒙国境の真実ともつながっているのか?
なんと堂々たる時代劇である。物語はほぼ登場人物たちのモノローグで進行する。闇の中に浮かび上がる老人たちの語りで進んでいく映画は思いかけず重厚だ。香具師的な部分ばかりが目立っていた最近の渡辺文樹だが、これは『ザザンボ』以来、ひさしぶりの福島土着映画である。例によって素人だらけの役者陣も、クローズアップでまさに福島の顔というものを見せてくれる。渡辺文樹はなぜか女優の趣味だけは素晴らしく、映画作りその他の側面では完成度などまるで意識していないにもかかわらず、女優だけは素晴らしい美人を選んでくる。今回も例外ではなく、ちょっと藤原紀香にも似たノブ役の女優(黒瀬麻美)には見惚れた。
だが、すっかり福島土着サスペンス映画と思ってみていると、映画は思わぬ凶暴な顔をあらわにする。途中からいきなり問答無用のアクションがはじまり、あらためてこれが渡辺文樹映画であることを思い出させられるのだ。いかなる問題よりもアクションのほうが優先される。映画が動き出したとたん、渡辺文樹はそれまでの問題意識を忘れてアクションに夢中になってしまうのだ。それが渡辺文樹の映画作家としての決定的な美徳である。
そのことをさらに痛烈に教えてくれるのはもう1本の最新作『天皇伝説』のほうである。『ノモンハン』の姉妹編、あるいはパラレルワールドとして作られたこの作品では渡辺文二郎(渡辺文樹)は米軍上がりのフリーライターである。渡辺は米軍のイラク侵攻に日本の秘密資金が流れているのではないかと考え、その調査をはじめる。だがその途端に妻が殺され、渡辺は犯人として逮捕される。真犯人は誰なのか? 渡辺の調査を恐れているのは誰なのか? 渡辺は天皇家に潜む「血の秘密」を探りつつ、事件の真相を知る「黒い爪の男」を追うのである。
ひたすら渡辺が調べあげた天皇家の「血のリレー」にまつわる陰謀を羅列していく映画にはほとんどの人は辟易するだろう。渡辺の脅迫的執念と反骨心はいやというほど伝わってくるが、映画としてはあまりに生硬で見せる工夫がかけらもない。やはり渡辺文樹は色物でしかないのだろうか……?
だが、そこでいきなり映画は一変し、いきなり最上級の肉体アクションに変貌する。渡辺と「黒い爪の男」はなんと『北国の帝王』のクライマックスを再現してしまうのだ。映像作家としての本能が思想を食い破り、祝祭的空間が現出する。そのときまちがいなく渡辺文樹の祝祭は完成する。


渡辺監督は9/11に公安警察による別件逮捕(軽犯罪法)で不当に拘留されたが12日の夕方に釈放されている。
明らかな上映会阻止が目的だったのであろう。

この騒動にはオチがある。

なんと行き場を失った右翼が、週刊新潮に抗議行動をおこしたのだ!
公安当局が懸念する右翼の怒りは、監督には向けられなかった。9月17日、右翼の街宣車5、6台が新潮社の前に押しかけ、「謝罪しろ!」と叫んだ。(収監新潮10/2号)

右翼の抗議はアタリマエだろう!
9/10発売の収監新潮により、どマイナーな自主制作映画「天皇伝説」の不敬な内容が、全国のコンビニにおかれた週刊誌によって宣伝されたのだから……。

月刊「創」編集長・篠田博之氏が新潮を9/29付東京新聞にて批判している。
皇室のきわどい話を紹介しながら、それはあくまで第三者が言っていることで自分たちはけしからんと思っていると憤慨してみせ、結果的にその第三者に右翼をけしかけるというのが「週刊新潮」の伝統的な皇室報道。


まさに今回は記事の中で「右翼は口だけで、なにもできない」という監督のコメントを載せて、右翼によるテロを煽った週刊新潮。
その矛先は残念だが自分らに向かったようだ……哂
posted by 死ぬのはやつらだ at 21:58| Comment(7) | TrackBack(0) | 映画/邦画・アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
右翼が新潮の記事に怒ったのは、「天皇伝説」への批判が足りない、罵詈讒謗が足りない、ということらしいですな。妙な話というか、何と言うか…すごい話だ。
それはそうと渡辺監督は今月にもリベンジをかける模様。月刊「創」のブログによると、今回も釈放直後、金沢映画祭で上映を強行したらしい。ポスター貼りの甲斐あって、地元の右翼から一斉に抗議の電話が殺到したらしいですが…
今月の「創」でも詳しく取り上げるらしいですが、今後の動向に目が離せませんね。正直、早く観にいきたいし。
Posted by 蒼ざめた鹿 at 2008年10月02日 00:20
オレもはやく観たいです。
ただ、今後も上映は公安によって阻止されるでしょうね。
ただ、右翼によるテロに関しては楽観視しています。
渡辺監督ごときを暗殺しても、彼らの名誉にはなりえません。
Posted by 死ぬのはやつらだ@蒼ざめた鹿 殿 at 2008年10月02日 19:26
つまり週刊新潮というのは「こんなのを見つけました」と来て、すかさず「ずばり、裕仁をバカにしていらっしゃる、映画ですよ」と呼びかけるメディアなんですな。
Posted by やきとり at 2008年10月02日 23:33
いつも楽しみにしています。
 全然、本文と関係ないけど、アナキズムについて説明した大変に参考になるホームページ「アナーキー・イン・ニッポン」を紹介します。

 未だにテロリストの原理思想のように思われているアナキズムについての誤解を解く事も"死ぬのは奴らだ"さんの活動のひとつだと思いますが・・・・
 堕落してしまった共産党に任せているだけでは左翼思想は廃れてしまうのみのような気がします。

http://www.ne.jp/asahi/anarchy/anarchy/about/

ちなみに左翼思想の有名人である、かの「ノーム・チョムスキー」も今は共産主義思想では不足と感じたのか「アナキズム」の辛抱者と自ら唱えています。
恐れ多い投稿をお許しください。
Posted by 梵天 at 2008年10月03日 10:48
死ぬのはやつらだ様

あなたが幸せでありますように
あなたの悩み、苦しみが消えますように
あなたの願いがかなえられますように
あなたの無明に、悟りの光があらわれますように

祈っております
Posted by アングリマーラ at 2008年10月03日 15:56
映画の話のついでに書き込みます。
先日、若松孝二監督のトークを聞く機会がありました。「実録・連赤」の「勇気が無かった」って科白、実は加藤三男が坂東に対してそっと打ち明けた科白に基づいているそうですね。「俺たちにもっと勇気があれば、兄ちゃんも死なないで済んだのに…」って具合に。坂東は相当ショックだったようです。おそらく加藤二男は直接聞いていなかったので、知らなかったのでしょう。

監督は戦争についても熱く語ってくれました。何でも、悪名高いシャティーラの虐殺の三日後には現地入りしていたとか。ジャン・ジュネに激甚な衝撃を与えたあの事件です。初耳だったので驚きました。
心に響く、いい話でしたよ。
Posted by 蒼ざめた鹿 at 2008年10月06日 22:53
>加藤三男が坂東に対してそっと打ち明けた科白

これは重要情報ども!

雑誌「情況」にて次男坊がそんなこと聞いてないって発言していた疑問点が解けました。
ヨカッタぁ。
Posted by 死ぬのはやつらだ@蒼ざめた鹿 殿 at 2008年10月07日 09:45
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