2004年04月23日

「自己責任」を振り回すヤツが、自分の発言に「自己責任」を取るのか?

「週刊ダイヤモンド」Webサイト「続・憂国呆談」浅田彰氏

<「イラク人質問題をめぐる緊急発言」update版>より

それにしても、この一週間、「2ちゃんねる」を中心に荒れ狂った3人の人質や家族へのバッシングは醜悪そのものだったね。

自分があたかも政府高官かなんかになったかのような誇大妄想に駆られて、やたらと「国益」なんかを論じたがるやつが多い。

そもそも国家が国民を保護するってとき、それがどういう人間かなんて関係ない、すべての国民を保護する義務があるんだから。しかも部分的であれ救出費用を請求するなんて、政府は民間警備会社かっての。
それにしても、この一週間、「2ちゃんねる」を中心に荒れ狂った3人の人質や家族へのバッシングは醜悪そのものだったね。われわれは一貫してああいうメディアもあっていいと言ってきたし、今もそう思ってる。筑紫哲也がネットの掲示板は「便所の落書き」だと言ったときも、「便所の落書き」で何が悪い、そもそもジャーナリズムというのはそういうところから発生してくるものじゃないか、と。ただ、そういう場所ではあくまでマイノリティとして──いわばマイノリティとしての矜持をもって発言すべきでしょ。
 ところが、自分があたかも政府高官かなんかになったかのような誇大妄想に駆られて、やたらと「国益」なんかを論じたがるやつが多い。待避勧告の出てるイラクに自己責任で行ったんだから殺されてもしょうがない、これだけ国益を損ねて迷惑をかけたんだから対策費用も負担するべきだ、それどころか家族が人質解放のため自衛隊撤退を主張するとはおこがましいにもほどがある、と──そうやって「自己責任」を振り回すヤツが、自分の発言に「自己責任」を取るかというと、反論の届かない安全地帯から匿名で言いたい放題を言ってるだけなんだけどね。むろん、政府の立場からすると、10回以上も待避勧告を出してるのに、それを無視して行く民間人の世話までさせられたんじゃたまらないってのもわかる。だけど、市民の立場からすると、退避勧告が出てても、現地の人たちに守られる形で着実に復興支援を進めてるNGOもいるし、貴重な情報を送ってくるフリー・ジャーナリストもいるわけだ。まあ今回の3人は軽率な判断で危険な地域に不用意に入っちゃったんだろうけど、ナイーヴとはいえ「善意」から行動してるわけだし、あそこまでバッシングされることはない。そもそも国家が国民を保護するってとき、それがどういう人間かなんて関係ない、すべての国民を保護する義務があるんだから。しかも部分的であれ救出費用を請求するなんて、政府は民間警備会社かっての。解放された人質が今後も活動を続けたいって言ったのに対し、小泉は「これだけ多くの政府の人たちが自分たちの救出のため寝食を忘れて努力しているのに、なおかつそういうことを言うんですかねえ」って不快感を示してた。イラク支援は自衛隊でやるってのが国の意志なんで、国の待避勧告を無視してイラクに行った民間人が国に迷惑をかけるのはけしからん、と言わんばかり。でも、彼らの一部は自衛隊派遣の前からイラクで活動してきたわけで、アメリカがイラクを無政府状態に陥らせ、日本がアメリカの尻馬に乗って自衛隊を派遣したことこそが、彼らに大変な迷惑をかけてるわけだよ。「それでもイラク人が嫌いになれない、今後もイラクでの活動を続けたい」って彼らがアル・ジャジーラのインタヴューで言ったのは、あの地域での日本人のイメージを良くするのに自衛隊よりずっと効果的だったと思う。アメリカのコリン・パウエル国務長官でさえ、日本やイタリアが自衛隊や軍に対する撤退要求に屈しなかったことを評価しつつ、こう言ってるわけ。危ない地域に入る人はみな自分の冒す危険を理解しているべきだが、誰も危険を冒そうとしないなら世界は前進しないだろう、日本人は自衛隊がイラクで活動するのを誇りに思うと同様に危険と知りながら良い目的のためにイラクに入る市民がいることを誇りに思うべきだ、もし人質になったとしても「危険を冒してしまったあなたがたの過ちだ」などと言うべきではない、と。まして、家族なんかは、最初から、「まず自分たちの家族が迷惑をかけたことを謝りたい」とか何とか、むしろ「日本的」すぎるくらい周囲に気を遣った発言が目立ってて、そこへ匿名で嫌がらせの手紙やメールを送りつけるなんてのはホントに最低だよ。結局、謝罪と感謝でひたすら頭を下げて回るだけってところまで人質と家族を追い込んじゃうんだから、まさに前近代のムラ社会だね。いや、人質と家族を日本に運ぶ飛行機で、機長に言い含めて彼らのいる区域を立ち入り禁止にし、報道陣を一切シャット・アウトするなんて、ムラ社会の座敷牢でなきゃ一昔前の旧社会主義圏であったようなお話。人質にトラウマを与えるのは、誘拐犯以上に、こういう日本政府や日本社会の異常な対応じゃないかって気がする。
 それから、ネットおたくなんかの場合、自分が物事の裏を読める情報通になったかのような誇大妄想もあって、それで、この人質事件は「自作自演」だとか言いたがる、あれもどうしようもないね。その証拠と称して持ち出された情報が捏造されたものだったのに、まんまと騙されて盛り上がってる。情報通が聞いてあきれるよ。現に、僕の緊急発言の最初の部分が配信されてすぐに「2ちゃんねる」で話題になったんだけど、途中でだれかが浅田彰がかつてインタヴューに答えたっていうインチキな記録を捏造して流したんで、それに対する批判と嘲笑に流れが変わっちゃったのには苦笑したな。その部分を引用すると;

--------------
浅田彰インタビューの一部をコピペしました!

 浅田:こういう時代だからこそ、憲法9条というのは、グローバルな価値を持つわけです
 記者:自衛隊はいらないということですね
 浅田:その通りです。暴力で物事を解決するというのは時代遅れです
 記者:他国が攻めてきたらどうするんだ、という声もあります
 浅田:万が一他国が攻めてきたら、日本人みんなが素手で応戦すればいいんです
 記者:素手ですか
 浅田:それで日本人が全滅したっていい。崇高な理想のために民族が滅びたと思えばいいんです
--------------

 『週刊ダイヤモンド』のウェッブ・サイトの語り口と比べればすぐわかるように、僕みたいなひねくれ者がこんな単純な話し方をするはずがないし、よりにもよって「素手で応戦」なんて言うわけもない。「インタビュー」の出典がどこか、「記者」とは誰かも書いてない。「2ちゃんねる」に書き込もうっていうくらいのやつならすぐインチキとわかるくらいのメディア・リテラシーはもっててほしいとこだけど、みんな素直なのかまんまと騙されて「ニセ浅田」叩きに狂奔してるわけ。矮小な例ではあるものの、現在メディアを通じての情報操作がいかに容易になってるかがよくわかるね。ネット時代だからこそ、それにふさわしいリテラシーとモラル──というか、こんな汚いことを言っちゃカッコ悪いっていうスタイル感覚がますます大切になってきてるってことは、あらためて強調しときたい。
 他方、僕自身が言った最初の発言に関しては、とりあえず人質が解放されたにせよ、何ら訂正の必要を認めない。繰り返すけど、自衛隊は明らかに「非戦闘地域」でなくなったイラクから撤退すべきだと思うよ。

(了)

http://dw.diamond.ne.jp/yukoku_hodan/20040416/index.html
posted by 死ぬのはやつらだ at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | この国のスバラシイ国民と社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
【アンマン=横田一成】
カタールの衛星テレビアルジャズィーラは15日夕(日本時間午後夜)、
「サラヤ・アルムジャヒディーン(聖戦士の部隊)」を名乗るイスラム武装集団に拘束されていた邦人3人が解放されたと報じた。

拘束されていたのは非政府組織(NGO)代表の今井紀明さん(18)=札幌市西区宮の沢2条2ノ3ノ24、
フォトジャーナリストの郡山総一郎さん(32)=東京都杉並区高円寺南5ノ37ノ19―101、
ボランティアの高遠菜穂子さん(34)=北海道千歳市上長都1058=の3人とみられる。

3人はイラク・イスラム聖職者協会の保護の下にあり、健康状態は良好と言う。
解放場所は首都バグダッド。
Posted by 通りすがり at 2017年05月05日 09:21
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。