2006年05月31日

少子化を憂うなら婚外子を認めることだ

我が日本と180度違うフランス。その基本は多様性を認める社会にある。

1999年に制定された連帯市民協約、略称PACS(パクス)によって、フランスは事実婚カップルの地位を保証した。結婚と違い貞操義務はなく、財政的に相互を援助する義務があるというもの。どちらか一方が解消したいと言えば、PACSを取りやめにできる。かなりゆるい結婚制度といえる。

月刊誌サイゾー6月号の宮台真司との対談で国際ジャーナリスト及川健二氏がフランスの魅力を語っている。日本では、男根作家イシハラや拉致シンゾーを始めとする「ジェンダーフリー」バッシングが横行しているが、西ヨーロッパでは、大都市のキヨスクでポルノ雑誌(もちろんノーカット)が売られていてハードゲイのものまである。フランスでも街頭に裸のポスターが貼られているし、キヨスクにはポルノビデオまで置いてある。
コンドームの使用方法を教えるのは間違いと言っている日本とは違って、フランスの高校ではコンドームを売っている。事後避妊ピルは無料配布だ。社会党の次期大統領候補と噂されているセゴレーヌ・ロワイヤル女史は教育担当大臣のときに、高校での事後避妊ピル販売を解禁した人物なのだ。

政治家のセックス・スキャンダルにも寛大で、シラク大統領が誕生して1年後に実施された世論調査での大統領とその婦人のどちらかに愛人がいたらショックか?≠ニいう質問があったのだが、約9割の国民がノン≠ニ答えたという興味深い結果がでている。クリントンがモニカとのスキャンダルでつるし上げられた時など、仏国内の新聞各紙は、アメリカの過剰なまでの反応を「性のマッカーシズム」とせせら笑っていたそうだ。彼らはアメリカをピューリタニズム≠ニバカにしている。

フランスの出生率に占める婚外子の割合は、2年前に約47%、あと数年で
50%になると言われている。結婚制度が相対化されつつある。

こうしたフランス情報を日本で広げるとどうなるか。宮台真司はジェンダー攻撃馬鹿オヤジを批判する。
馬鹿オヤジが家族制度の崩壊だ!≠ニ噴きあがるぜ(笑)。西ヨーロッパは80年代以降「典型家族」が衰退するなら「変形家族」で補おう≠ニいう再帰性に合意した。家族がダメなら、家族のようなものでいいじゃん≠ニ。それでこそ保守。日本では、タカが世代的な思い出に過ぎぬ「典型家族」にエゴイスティックに固執する「正論」的馬鹿オヤジこそが、社会を崩壊させてきた。

面白いのが、事実婚を認めたPACSができてから、フランスでは結婚の数が増えたこと。オプションが広がったゆえに、制度により自覚的になったようだ。
日本では婚外子の割合は1%。最も婚外子が少ないカトリックの国イタリアも、70年代には日本同様1%未満だったが、今では20%を超えて少子化を脱した。日本だけが1%未満で変わらず、少子化対策に苦しんでいる。
宮台 「婚外子を許さない!」と「少子化対策を!」とを同時に主張する連中に、脳はあるのか。多様性を認めると秩序が崩壊する≠ニいう馬鹿オヤジの論調は、フランス的にはどう?

及川 ヨーロッパにおいて、市民化は脱宗教化です。脱宗教化とはカトリック的な価値観から、互いに迷惑をかけない限り自由を享受できる市民社会の論理に移ることを指す。社会が成熟すれば、多様性が生じるのは当たり前ですよ。

宮台 重要だね。宗教は画一的で世俗は多様。法律は画一的で個人は多様。多様性を支えるものが秩序だとするのが欧州だ。日本で同じ感受性を広げるには、どんなボタンを押せばいいか。ヒントは昔話。日本も昔はそうだったの。「皆が知る建前」(法律)とは別に、村ごとに「皆が知る本音」があった。浮気も乱交も「皆が知る本音」の枠内にある限り、騒ぎにならない。でも共同体の空洞化で「皆が知る本音」が「人知れぬ本音」になり、疑心暗鬼と駆け抜けへの嫉妬が蔓延した。要は、日本的寛容さには、共同体的プラットフォームが必要だったの。日本的寛容さを呼び戻すには、共同体的プラットフォームを再帰的に…「典型」でなく「変形」として…呼び戻す必要がある。リベラリストがコミュニタリアンたらざるを得ない所以だよ。

及川 日本で欧米流≠チて言われる時はほとんど米流≠ネんで、ヨーロッパ文化をドンドン紹介していって相対化するのもひとつの方法ですよね。今はセクハラ問題にしても、全部米国流です。アメリカこそ特殊なんだから、ヨーロッパ文化を紹介することで、アメリカ的言説を相対化しなければいけない


まさに、日本の大衆にとって外国とはアメリカであったことは事実だ。皮肉を込めて言わせてもらえば、あのピューリタンの極端な純潔主義は、日本の伝統である、皇室の側室制度や夜這い乱交を認めていた社会には反する。キリスト教の根源的な思想である「愛」などというものは、日本語にはなかったのだから。ヨーロッパの多様性を、この国民にもっともっと知らしめねば。
また、脱宗教化できていないイスラム教徒を受け入れることの困難さを、フランスは身をもって示しているともいえよう。

同じサイゾー6月号には、噂真岡留のページであのジェンダー研究の第1人者である上野千鶴子が語っている。

岡留 それにしても、権力者たちは、どうしてジェンダー・フリーをそんなに怖がるんですかね?

上野 それは、やっぱり家族が揺らぐからでしょう。あの人たちは、国家と家族が大好き。私は「state」という言葉を「国家」と訳した奴はすげぇなと思います。「国」と言えばいいのに、「国・家」と訳したんですから。家族と言うのは、国家の支配の根幹なんです。家族は国の礎ですから。家族が壊れるのは、彼らにとって、ものすごい危機ですよ。だから、子どもの教育に介入し、女には結婚して子どもを産んでもらわないと困る。一昨年は、『負け犬の遠吠え』の著者の酒井順子さんみたいな人が出てきて、負け犬大論争になりましたが、為政者としては、少子化に拍車をかける負け犬は許せない。ちなみに、私は最近、講演では、「負け犬の大先輩・上野です」と言ってるの(笑)。考えてみたら、市川房江さんもそうだった、と。

岡留 ハハハ。でも、国家の危機といえば、少子化問題のほうが、お上にとってはよっぽど大問題だと思いますけどね。

上野 そうですよ。少子化とおっしゃいますが、今、人口減少が起きているすべての先進諸国では、人口置換率(人口が増えも減りもしない出生率)である2.1を割っているんですよ。低出生率の中でも、上位、中位、低位と分かれていて、日本は低位に入っているんですが、上位は、フランスやイギリス、それに北欧諸国なんですね。ところが、上位国の出生動向をよく見ると、新生児の3分の1から半分近くが、婚外子なんです。だから、この婚外子の部分が抜けたら、当然、数値は落ちますよ。他方、日本は今、10代の妊娠中絶率が高いんです。それを闇に葬らずに、婚外子でも、できちゃったら、どんどん産ませたらいいじゃないですか。それで、「みんなで育てようね」って。でも、男の為政者たちは、それは絶対に許せないわけ。「家父長制」の家族とは女と子どもが男に所属する制度ですから、「子どもは産んでもらいたい、だけど、男に所属しない子どもを勝手に産んでもらうのは困る」と、まぁ、なんて露骨に男の権益を守りたい奴らだろう、って。

岡留 なんともわかりやすい為政者たちのご都合主義的発想ですね(笑)。

上野 わかりやすぎる。少子化現象を止めたいのなら、今、10台でポコポコ妊娠している、避妊の下手な子どもたち、体力のある子どもたちに、「お願い産んで」と言えば、出生率はすぐにあがりますよ

岡留 それは上がるでしょう。今回のジェンダーフリー問題にしても、石原都知事をはじめとする為政者は、論理的に意識して家族の崩壊を恐れているとお考えですか?

上野 論理的に意識している人もいるだろうけど、それ以前に、男性の危機感って、もっと直感的なものでしょう。足下で家族が崩れていったり、妻にも見放されることほど、男にとって恐ろしいことはないんだから。

岡留 石原ファミリーも石原軍団も、間違いなく家父長制志向ですね。

上野 ああいう人たちは、本当は女が好きなんじゃなくて、男が好きなんですよ。ホモソーシャルな男の絆の中で生きたがる人たち。男の軍団が好きで、女はそれにかしずくだけの存在なんです。


結論としては、少子化対策の早道は、日本では未だ日陰者の婚外子を社会がフツーの子どもとして受け入れる社会にすることが必要ってことだ。
それにしても、射精する男ってのはなんて楽な存在なのか、あらためて考えた次第。
posted by 死ぬのはやつらだ at 18:41| 東京 🌁| Comment(9) | TrackBack(1) | エロばなとジェンダー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
俺は上野氏が大嫌いです。しかし

>日本は今、10代の妊娠中絶率が高いんです。それを闇に葬らずに、婚外子でも、できちゃったら、どんどん産ませたらいいじゃないですか。それで、「みんなで育てようね」って。

これには思わず納得してしまった。もろ日本的発想。子は宝だから妊娠中絶は重犯罪だと思っていますのでこの方法もありかなと思う。考えさせられました。
Posted by とよあしはら at 2006年05月31日 21:49
上野さん、好きですよ。私は。
ただ私、少子化が悪いとは思わない。
地球規模で見たら少子化すべきだと思う。日本の人口も6000万ぐらいが適当かと思う。
法律は犯すために存在するように、家って破壊されるために存在しているようなものだと思うよ。
だから崩壊は悲しいことではないよ。喜ぶべき事。
Posted by T at 2006年05月31日 22:19
こんにちは。
ちなみに婚外子の割合はいま2%に近づいています。
人口問題研究所にある一般人口統計から、
出生・家族計画>表4−19
を参考にどうぞ。
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/Popular2006.asp?chap=0
Posted by 夫婦別姓を待つ身 at 2006年06月02日 17:04
>子は宝だから妊娠中絶は重犯罪だと思っていますのでこの方法もありかなと思う。

うん、そうだよー。

それに「みんなで育てる」ことで“みんな”という疑似家族が形成されるわけだけど、その中には保守層が期待するような典型的家族も当然含まれるわけでしょ? すると家族主義に回帰できる側面もある。

支援されてれば、当事者の若い父母もいっしょうけんめい働いたり勉強したり育児したりするし。いいことずくめだよね。
Posted by Bar at 2006年06月03日 05:48
かつての日本は中絶や堕胎、子殺しなど当たり前でしたが(無論、貧困や避妊法の乏しさも原因にあるが)。
それはさておき、産んで欲しいと言うのなら、子どもの為に莫大な税金を費やすことへ国民が積極的になることが必須でしょうね。それこそフランス並に。
しかし日本では、父母だけに責任を押し付けて、金など出したくないという人間が大多数ではないかと思いますが。
個人的には、仮に税金云々が無くても、少子化が進んでくれて一向に構わないです。
Posted by 北国人 at 2006年06月03日 18:12
上野千鶴子は学生のころははまった。働き出したらつまんなくなった。ジェンダー論議は、一夫一夫制度派は頭固すぎるが、フリー派も結局頭でしか結婚ってものを考えてないのよねえ。私は夜這い復活を提唱したいが、夜這い研究の元祖赤松啓介も上野は学者やと批判しとったな。そういう意味では、内田樹のいう「フェミも家父長制の変形でしかない」は正論だと思う。内田と「オニババ化する女たち」三砂ちづるの対談「身体知」あたりが男と女の平行線の突破口の入り口じゃなかろうか。
Posted by 山澤 at 2006年06月03日 22:07
上野女史、最近買ったのが、BMWのZ4 2.2i。これが、似合ってるんだわ。

このおばちゃん、侮れないぞ。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2006年06月08日 04:21
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Posted by �p���`�������������N�W at 2011年11月04日 14:37
婚外性関係でできた子供も産んで育ててもらうのが、一番効率的な少子化対策。高度成長期前の、子供に家事や弟妹の世話させる位、虐待扱いしない寛容さも必要。離婚後の親子交流で9歳の子供が一人で2時間で行ける父親に会いに行けないというのが不思議でならない。私を親子交流法案の審議に呼んでくれたら、特別養子に出している間も婚姻障害のみの認知制度を作って、婚外子全員強制認知制度の発端を開き、出生数を1年位でかなり増やせるけど。
Posted by なおみん at 2017年02月08日 22:50
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