東京都江東区北砂1丁目5-4。この場所は、東京大空襲の際、隣接する深川区扇橋とともに、米帝による、民間人殺傷を目的とした焼夷弾爆撃を受けた。町は全焼し、烈風下の火流と東西・南北に走る小名木川と横十間川が半狂乱となって逃げ惑う人たちの避難をさえぎり、地上は灼熱地獄、飛び込んだ川は煮えたぎり、おびただしい犠牲者を出した下町である。
GWの4月30日、俺は友人と、61年前にこの世の地獄となった江東区北砂の東京大空襲・戦災資料センターを訪れた。
入館して、まず最初に2階の会議室で、東京大空襲を描いた国営テレビ「東京大空襲」の短縮版(25分)を見せてもらった。
30年近く前の国営放送は、イラク戦争を支持する今の報道姿勢とは違って、ストレートに米帝の横暴ぶりを告発した内容となっていた。折り重なって黒焦げとなっている死体、赤ん坊を抱いたまま親子で黒焦げとなった死体もアップで放送。死体となるとすぐにモザイクでごまかすいまの痴呆テレビとは雲泥の差だ。
圧巻は、東京大空襲の責任者である鬼畜ルメイ将軍の自宅までおしかけ取材したシーン。ルメイはカメラとインタビューを頑なに拒否したが、自宅の居間の撮影は許可した。カメラマンは鬼畜の素顔を隠し撮っていた。ガラスケースには日本政府から貰った勲一等旭日大綬章も飾ってあった。このシーンは、偶然であるが「ボーリング・フォー・コロンバイン」にてムーアがヘストンの自宅におしかけ取材したシーンにとても似ていた。とにかく、これを見るだけでも来る価値がある。
3階の資料展示室には、興味深い資料が多い。その中で俺の気になったものをいくつか紹介する。
雑誌『国民総力』昭和19(1944)年7月号(国民総力朝鮮連盟)より、「敵機は何を狙って来るか」菰田康一陸軍中将の防空論。
……東京の爆撃を或る一つの想定の下に計算しますと、約10万人の人が死ぬことになります。重軽傷者はもっと沢山出来ます。あすこに3000人、こっちに1万人といふ風に死骸が転がってをる。これを見たら、大抵の人は腰が抜けて了ふ、これがこれからの爆撃です。生優しいことではありません。しかし東京の人口は7百万から8百万である。その中で10万人死んだところで東京は潰れない。日本全体を考へると10万人死んだところで驚くにあたらない……
この陸軍の国賊中将は東京の防衛局長をやっていた輩。10万人死んでも大丈夫の理由は「関東大震災でも復興を遂げたではないか」ということらしい。まさか、これを書いた8ヵ月後に東京大空襲で自分の予想通りの被害がでたことをどう思ったのか……それでも、「驚くにあたらない」ことだったのだろうか。
帝都翼賛壮年団のポスターにはこうあった。
空襲災害は最初の1分!退くな、逃げるな、必死で消火!消せば消せる焼夷弾!退避は待機、焼夷弾には突撃だ!
天皇陛下に命を捧げる兵隊とはなれない帝都翼賛壮年団。あの日、焼夷弾に突撃した人はいたのだろうか。
大空襲から1日遅れで報道した「読売報知新聞」。もちろん空襲はトップ記事ではなかったが1面トップ(とはいっても紙面はペラ1枚もの)の「仏印の敵勢力一掃に断=vという記事の左隣に東京夜間空襲を報じている。
B29百卅機帝都来襲
深夜、市街地を盲爆
15機を撃墜
戦力蓄積支障なし
大本営の発表は次の通り。
大本営発表(昭和20年3月10日12時)本3月10日零時過ぎより2時40分の間、B29約130機、主力を以て帝都に盲爆せり、右盲爆により都内各所に火災を生じたるも宮内省主馬寮は2時35分其の他は8時頃迄に鎮火せり
現在迄に判明せる戦果次の如し 撃墜15機、損害を与へたるもの約50機
あの日、灼熱地獄の中で焼け死に、酸欠で窒息死、溺死した者たちをただ「其の他」と称している。「愛国心」なぞ馬鹿らしいことが、これでわかるだろう。天皇陛下に命を捧げても、ただの「其の他」となってしまうのだから。
天皇の馬小屋など、燃えて当然、どうでもよいことだ。都民が飢えているというのに、よくぞ、のうのうと馬を飼っていたものよ。
親元を離れ、学童疎開で田舎にいっている岩田一彦君の両親に宛てたハガキ
……B29の落ちるざまは いいざまでした。今日らくかさんでおりたほりょ四人を見ました。兵隊さんがなぐったのでみんなは手をたたいて「いいざまだ」と言ってよろこびました……
京都市本能国民学校の校長が昭和18(1943)年3月の卒業記念アルバムに生徒に向けた送る言葉が酷い!
征け 戦へ 死ね
卒業していく生徒に「死ね」とは……。戦前から2ちゃんねるの芽生えがあったというわけだ……。
他、実物の焼夷弾や焼け出された人の遺品、ネトウヨと変わらない自慢のオンパレードの当時の新聞雑誌等等、貴重な資料がタクサン。5000冊にもおよぶ資料は、館内で閲覧が可能だ。
都バスでなければ行けないのが少々不便だが、是非一度は訪れてほしい。俺はアキバからバスでいったよ。
http://www9.ocn.ne.jp/~sensai/access/index.html
【ここから蛇足】館内の裏手にある家、アップで見ると
なかなか味わい深い、障子の破れかたである……





