女優としての南田洋子は正直パッとした映画はないのだが、選ぶとしたらやっぱりこの映画でしょう。
長門裕之はじめての主演作品で、ヒロインだった南田洋子との出会いとなった作品。
石原裕次郎のデビュー作品として、近年のマスゴミでは紹介されることが多いが、あくまで彼はチョイ役の脇役にしか過ぎない。長門としては腹が立つことなんだろうとお察しする。
石原慎太郎の原作は読んだことがないが、映画としてはかなりイイ線いっていると思う。
1955(昭和30)年、終戦からわずか10年、大多数の国民が貧しかったこの頃に、葉山でヨットだクルマだと乱チキ騒ぎで過ごしていた石原兄弟がいかに浮世離れの生活を送っていたかが手に取るようにわかる。
ただ、若者によるやり場のない怒りが暴力とセックスに向かっていくという流れは世代を超えて普遍なものだということは確認できるだろうし、いつのまにかその時代の若者たちと同化してしまう怖さも混在している。
テーマ音楽の切なさは、こっけいな味わいも合わせながら、ラストのやりきれなさに繋がっていく。
長門裕之はたぶん長くはないだろうし、そうあって欲しいとも思う。
もし、彼が長生きして痴ほう症になれば、それはそれでマスゴミの餌食となり、奴らの格好のネタとして消費されてしまうからだ。