2009年08月28日

食料自給率40%の虚実と騙され続ける国民

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「食料自給率1%アップ運動」

いま国が巨費を投入して行っている食料自給率アップの巨大キャンペーン。「先進諸国最低の40%」と云われている日本の自給率。
しかし、表に出ないもうひとつの数字があったのだ。
金額ベースの食料自給率は約70%
その数字は農水省の資料にあった。
カロリーベース40%
生産額ベース 66%

66%という数字がほとんど人目に出ないのはなぜなのか?
農水省は金額ベースの数字を出せない。
自給率40%を前面に出し、食糧自給危機を煽る農水省。その裏側にある本当の思惑とは?

以下、田原総一郎の所為でサヨクに不評の「サンプロ」で放送されたレポートより。
農水省のカロリーベース自給率によれば、主要国の自給率は次のとおり。

カナダ……145%
アメリカ…128%
フランス…122%
ドイツ………84%
イギリス……70%
イタリア……62%
日本…………40%

しかし、スーパーには国産品が並んでいる。コメは100%国産で、卵や肉や野菜、ほとんどが国産品だ。それでも自給率が40%にしかならないのはなぜなのか?

食料自給率という言葉が登場したのは1965年当時の「農業白書」からで、当時の自給率は81%だった。高度経済成長で食料の輸入品が増加、そこから国産の割合を示す指標として誕生した。

食料自給率には実は2つの計算方法がある。
1つは金額ベースで、生産額を金額に置き換えて計算したもの。1965年の農業白書も金額ベースで計算されている。
現在、主に使われているのはカロリーベースで計算されている。
2007年の自給率をそれぞれの方法で計算すると、カロリーベースでは40%だが、金額ベースでは66%だ。
カロリーベースが用いられるようになったのは、1973年の第1次オイルショックがきっかけだった。大豆関連の食品の物価が倍に高騰したのだ。それを機にカロリーベースのほうが指標として使えると農林省は判断した。

しかし、すぐさまカロリーベースに変更されたわけではなかった。どちらも一長一短があったからだ。
金額ベースの短所は為替変動の影響を受けやすかった。
カロリーベースの短所は畜産の生産活動がカウントされない。野菜果物のウェートが小さくなることだ。
畜産物は肉は国産でも、餌のほとんどは輸入に頼っている。
たとえば豚肉は52%が国産だがカロリーベース自給率では5%になってしまう。
一方、野菜はカロリーが低く、カロリーベース自給率に占める割合が2.9%になってしまう。いくら国内生産が増えても割合が増えることはない。

カロリーベース自給率は88年から登場し、95年には金額ベース自給率は白書から完全に姿を消した。
その背景には95年のコメ輸入自由化があったのだ。
自給率が低いのにコメを自由化したら日本人の生命線が脅かされる。そのために農水省がカロリーベースの自給率を持ち出し、「日本の自給率は低い」と言い出した。
それによってカロリーベースの自給率は一人歩きを始める。一時は日本人のコメ離れもあってカロリーベース自給率は39%(06年)まで落ち込んだ。

日本で飲まれている牛乳はすべて国産であり、金額ベース自給率では92%なのだが、農水省による牛乳の自給率(カロリーベース)はわずか41%にすぎない。
消費者の間に牛乳の自給率が低いという誤解を生じてしまったので、業界団体はこんなCMを作ったほどだ。

これには訳があった。餌をすべて輸入している畜産は自給率0%に見なされてしまうのだ。日本で生まれて日本で育った牛乳がカロリーベースでは換算されない。これは農水省による規定によるもので、「畜産物は飼料の自給率を考慮に入れる」とある。
ところが自給率100%(食用)のコメも、機械の燃料や肥料は輸入に頼っている、にもかかわらず畜産物だけが除外されてしまうのだ。
カロリーベース自給率には他にも問題点が指摘されている。廃棄されてしまう食品もカウントされてしまうからだ。
ちなみに09年白書によれば、年間900万トンもの食品が廃棄されている。この廃棄分を除いて計算し直せばカロリーベースの自給率は54%になる。つまりカロリーベース自給率は「飽食の自給率」なのだ。

このようにいろいろ問題のあるカロリーベース自給率だが、これを使用しているのは日本と韓国だけだ。
白書に掲載されている外国のカロリーベース自給率は、各国が発表した数値ではなく、農水省が独自に試算した数値を使用している。

テレビ朝日が各国の金額ベース食料自給率の数値を農水省に求めたところ、「データーが入手できない。試算しておりません」との回答だった。

テレビ朝日試算 主要国の金額ベース自給率
フランス…128%
カナダ……124%
アメリカ…100%
イタリア……89%
ドイツ………73%
日本…………66%
イギリス……49%

農水省が発表するカロリーベース自給率ではイギリスが70%と大きく上回っているが、金額ベースでは日本がイギリスよりも17ポイントも自給率が高いことになる。

イギリスは果物の9割、野菜の4割を輸入に頼っており、急激な自給率の下落となっている。実際、英国政府のレポートでも95年から15ポイントも自給率が低下したと懸念を示している。
ところが日本の農水省は、これとは逆の報告をしている。
「英国では、我が国とは逆に40年間で27ポイント向上」
食い違う英国政府と日本の報告。実はここに農水省の本当の思惑が隠されていた。

国民1人あたりの農産物輸入額をみると…
イギリス…756億ドル
ドイツ……698億ドル
フランス…607億ドル
カナダ……592億ドル
日本………330億ドル
アメリカ…223億ドル

日本は農業大国といわれるフランスよりも低いのだ。
一般に思われている、「先進国の中で日本だけが食糧輸入に頼っている」というのは間違いだったのだ。

農水省はわざわざ敵性語である「FOOD ACTION NIPPON」という植民地根性丸出しのスローガンを掲げ、新聞全面広告や有名人を使ったイベントを多数行い血税を浪費している。
http://syokuryo.jp/index.html
これら「食料自給率 戦略広報費」として計上された予算は2年間で34億円にのぼる。
それだけではない。小学校の教科書でも食料自給率の低さを強調。使われているのはカロリーベース自給率の40%という数字だ。
このため国民は洗脳され、「先進国の中で最低の食料自給率」というのが浸透。

農水省は、なぜカロリーベース自給率を使するのか?
自給率が低いと宣伝することにより国民を不安にさせ、農水省の役割を過大評価させるというのが目的だと番組では指摘していた。
その結果、予算が拡大されることになる。自給率関連予算は倍々で増えているのだ。
今年度は2889億円という金額が自給率向上対策として計上された。
しかも予算の7割がコメの転作関連。水田対策に偏っているのだ。
速い話が自給率向上を隠れ蓑としたコメ農家の保護だ。
コメ農家は、戦後ずっと自民党の票田であり、農水省の思惑とも一致している。
これこそが、社会党・共産党が許し、創価学会が支えてきた自民党独裁政権の悪弊なのだ。
今年度は転作農家に404億円の補助金が目玉となっている。
これこそがバラマキだろう。

確かに、このような政官業の癒着構造は、農水省に限らず霞ヶ関の常とう手段なのかもしれん。
たとえば、殺人などの凶悪犯罪は、昭和30年代の方が多かったのに、マスゴミを利用し凶悪犯罪を強調することで不安を煽った。結果、国民の間に不安が増大し、警察官の人員増員が簡単に容認される結果となっている。
防衛省も北朝鮮による核攻撃を吹聴し、当たらないパトリオット・ミサイルの予算確保に成功している。


役人が危機を煽る時は何か裏があると考えてよい。
そして、役人が「安全」「安心」を唱えるときは、よっぽど危険な時だと考えた方がよいだろう。


ラベル:自民党 農水省
posted by 死ぬのはやつらだ at 22:36| Comment(4) | TrackBack(1) | この国のスバラシイ国民と社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
申すまでもなく賃金の最低線とは、「生命の再生産ができる」、つまり労働者が自分の生命を養い、セックスをし、その結果できた子供を養い等々の生命活動を維持できるだけの金額である、
というのが資本主義の不磨の鉄則であります。
そこで仮に、自国で食糧を生産すれば高くつき、海外から輸入すれば安くつくという自然的・経済的条件の資本主義国があるとしましょう。
その場合、その国の資本家つまり支配階級は、農産物=食糧の供給について、国内自給を選ぶでしょうか、それとも輸入を選ぶでしょうか。
労賃(=コスト)をできるだけ引き下げて剰余価値を増やすという資本の要諦からすれば、当然その選択は、廉価な輸入品に頼るとなるでありましょう。
なぜと言えばそれが労働者階級の生活費を低廉化するのにつながり、労賃を低レベルで維持するのに役立つからです。
わが日本国は言うまでもなく資本主義のもとに存在しています。
食糧費を高騰させ、そのことによって労賃が高くならざるを得ない状況をもたらし、ひいては剰余価値を低下させる、こうした結果をもたらす一切の政策はわが国の国益に反すると言えます。
まったく農水省の役人は国益を何と心得とるのか!
食糧自給率を実体より低いものとプロパガンタして、食糧費を低廉に維持しようとする努力(=労賃を低廉な水準に維持しようとする努力)を妨げるとは! 国賊以外のものではありませんね。
Posted by てなもんや六道遊行 at 2009年08月29日 02:57
非常によくまとまったエントリー、さすがですね。
金額ベース云々の話は農業関係者にはほぼ常識になってるんですが、
御指摘の通り一般にはさっぱり浸透してないんです。
本当に自給率を上げたかったら、飼料(トウモロコシ)を量産するのが一番なんですが、
誰も言わないし、やろうとしないんですねえ。

ついでに農水省から某大手広告代理店に60億ほど流れているそうです。
最近いろんな雑誌メディアとかに「農業カコイイ!!」な特集が組まれて奇異に思われませんでしたか?
ブルータスまでやってましたよね。

農業の経験もない評論家だの政治家だのが、
「日本の農業は甘やかされてて云々」と偉そうに言いますが、
実際はそれほどだめだめではありません。
もちろん問題点がないわけでないですけどね。
しかし、その問題点は日経が言うような「大規模化」で解決するものではないし、
下手に大規模化を押し進めればかえって弱体化してしまうでしょう。

そんなに大規模農場がやりたいんなら飼料用トウモロコシの生産をすればいいのに、
誰も言わないし誰もやろうとしない。
偉そうな某居酒屋チェーン社長も聞く耳持たないみたいです。
飼料用トウモロコシの増産は既存の農家を脅かすことはありませんが、
某食料メジャーは快く思わないでしょうね。

長々と乱文失礼しました。
Posted by オサーン at 2009年08月29日 14:37
この件、農水省のお役人さんに一票。
本気で飢餓状態なら牧畜はほとんど切り捨てに
なるんじゃないかな。
コメ生産と同じだけの石油で同じカロリーを
生産できるとは思えない。

仮に石油を傾斜配分するとしたらどっちを選ぶという話と
とりあえず自給率の数値を上げれば良いやという話、
並べて考慮に値するとは思えないんですが。

Posted by toxin at 2009年08月29日 23:26
数字は幾等でも操作できます。
カロリーベース、金額ベース以外にも重量ベースも有るが、鉄鉱石を輸入して鉄に加工して車に加工すれば、重量ベースなら何万分の一になり金額ベースなら其の逆の何万倍かに成る。

カロリーベースなら、畜産では消費する餌(穀物)と得られる食肉は牛肉では十分の一で豚肉や鶏肉でも6〜3分の1程度に小さくなるのは当たり前。
これは水産業でも同じでイワシをそのまま食べれば養殖ブリを食べるより8倍も沢山食べれておまけに栄養価もブリよりイワシの方が優れている。
今世界人口の6分の1の10億人が飢餓線上にあり、何万人かが毎日餓死しているのです。
今日本で家畜の飼料として一番多く使われているトウモロコシも国によっては主食になっている国々も数多い。
中国やインドエジプトなどの国々が豊かになり、今まで以上に肉食が進んでいるので、これから穀物の需要は到底足りない。
今度の記事ですが、
農産物に対する関税問題での農水省対通産省、財務省の対立とも解釈出来ますが、全人類的見地からあえて農水省の立場を支持したい。
基本的には肉食は贅沢なのですよ。
動物性蛋白質を安価に取る為に餌の半分がカロリーが得られる一番効率が良い昆虫食をせよとまでは言わないが、みんなが飢えずに済ますためには資源の浪費も甚しい贅沢なのだとの自覚が日本人にも必要なのでは無いでしょうか。?

農水省の、人類みんな為になる小さな誤魔化しよりも、今マスコミや財務省などが行っている『安定財源としての消費税』の方が、悪質は大嘘でに日本を根本から破壊する。
世界で消費税が導入されている主な理由は『インフレ対策』なのです。
それを激しいデフレの日本で行う犯罪的愚行は万死に値する売国行為で許すべきではありません。
Posted by 逝きし世の面影 at 2009年08月30日 15:06
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Excerpt: 元大蔵省官僚でエール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得した野口悠紀雄早稲田大学大学院ファイナンス教授は、 「食料自給率40%」の虚構さえ見抜けぬマスメディアの不勉強、日本のマスメディアは「公衆の..
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