2006年01月15日

「コーヒーでよろしかったでしょうか?」の発祥地はどこだ?

日本一売れない週刊誌、週刊金曜日(1/6号)の対談 中村うさぎx町田健(言語学者)が、かなり「楽しめた」。「問題な日本語」なんてホントにあるの?って記事である。

最近、職場でもタメ口が多くてイライラする古い俺がいるのだが、中村うさぎ(かなり好きだ)と町田健の考えにバキューンされた。「正しい日本語」なんぞ意味がないってのが結論だ。

大前提として、言語は絶対に変わっていくもの。日本語だって「東京語」というものを基本にして「標準語」としているだけで、どれが正しいなどということはもともとない。いま、いろいろ言われている「問題な日本語」は「間違っている」のではなく「前とは違う」ということ

尊敬語とか謙譲語というのが崩れてきているが、崩れる理由がある。尊敬の対象が、以前は年長者とか社会的規範に従っていたわけだが、いまは本人の距離感にまかされるからだ。

謙譲語というのは、自分を低めることによって相対的に相手を立てる、つまり間接的だ。敬意をそのまま表すわけではない。一種の自己卑下である。だから、どんな言い方であれ尊敬の意さえ示せればいいのだから、謙譲語がなくなるというのは、合理的な流れであって、悪くない変化なのではないか。

新しく使われるようになった言葉には、腕局表現が婉曲表現が少なくない。
例)「なにげに」「〜みたいな」
婉曲表現は人間関係を円滑にする一つの手段だが、とくに日本ではもともと多い表現で日本語の特徴。新しい婉曲表現が次々と出てきても、なんら不思議はない。

そこで問題。それならば、「コーヒーのほう、お持ちしました」って表現は「コーヒーお持ちしました」と断言せず、婉曲表現となるのか?
中村うさぎの説では、尊敬表現となる。「そちらさま」というのと同意義の使い方だと言うことになる。

なぜか? 

「コーヒーのほう」という言い方は、コーヒーを注文する側は絶対に使わない。注文を聞かれて「コーヒーのほう、もらおうかな」とは客は使わない。一方、店員から見ればこれは「お客様のコーヒー」ということになり、それを直接「コーヒー」と呼ぶのは失礼ということと考える。それで「お客様のコーヒー」という意味で「コーヒーのほう」という尊敬表現となる。
言語学者の町田氏によれば、これは理にかなった表現だそうだ。日本語は、相手のことを直接的に言わないというのが尊敬表現となるからだ。

緑茶であれば、「お」をつけて「お茶、お持ちしました」と言えるが、「おコーヒー、お持ちしました」と言えないから、「コーヒーのほう、お持ちしました」という表現となる。

みな、「〜のほう」という表現に「丁寧にしたいんだ」という気持ちを込めているのではないかと、町田氏は考える。

「よろしかったでしょうか?」という過去形表現はどうだろう?

町田氏は、「かった」と過去形にすることにより、さらに婉曲な表現となっていると言うが、中村うさぎ氏は「よかったっけ?」の丁寧語だと考える。「対等な感覚」に「丁寧な表現」をプラスしたものなのだと。

日本語で難しいのは、現在のことを過去形で表現することがあったりすること。

例1)友達同士でテストの話していると「○○ちゃん、勉強した方がいいよ」とは言うが、「勉強する方がいいよ」とは言わない。
例2)物を探していて見つけたとき、「あった」とはいうが、「ある」とは言わない。

その流れで、話は、札幌のクリーニング屋の話となる。俺も記憶があるのだが、札幌のクリーニング屋は「クリーニング屋でした」って挨拶する。宅急便もそうだ「ヤマトでした」なんて過去形で話す。得意先に訪問したときに、自分のことを「〜でした」と過去形で伝える。これって札幌(もしかして北海道)だけの特殊な言い回しらしい。うーむ。

町田氏はダメ押しでこう言っている。

札幌には「コーヒーでよろしかったでしょうか」という表現が全国でいちばん早く定着したって説があるんですけど、そういう素地(「クリーニング屋でした」って表現)があったからかもしれません。


俺「的」には、「ぶっちゃけ」「まじっすか!?」って感じです。

posted by 死ぬのはやつらだ at 01:41| 東京 🌁| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たしか、降雪地帯に多い表現だったかと思いますが電話をもらった時に

「○○でしたー」

のように過去形で挨拶をするというのがデフォルトな地区というのが、けっこう昔から存在するそうです。

「よろしいでしょうか」ではなく
「よろしかったでしょうか」の方がソフトな気もします。個人的にはアリだと思います。過去形を使った婉曲表現。
Posted by 木林 at 2006年01月15日 02:54
「〜でよろしかったでしょうか」は名古屋起源だと思うんですけどねえ。

「過去形による丁寧な表現」は英語と一緒、という次の指摘は目から鱗が落ちる思いでした。
http://blog.alc.co.jp/d/2000066?nid=20051107
Posted by aroma at 2006年01月15日 09:44
札幌は、発祥の地ではなく、いち早く定着が広まった地だそうです。

「えびふりゃーのほうで、よろしかったでしょうか」

「ウイロウのほうで、よろしかったでしょうか」
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2006年01月16日 02:45
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